絵筆のように(三)

  • 2009.08.27 Thursday
  • 20:28
JUGEMテーマ:教育 

 八月の初旬は、ここ数年、成安造形大学での「発想法演習」の季節です。
 環境デザインクラスの学生に加えて、今年はプロダクトデザインクラスからの参加もあり、また例年になく男子学生の多い演習となりました。

 仰木地区の〈里山〉という豊かなコスモロジーを、三日間のフィールドワーク演習で体感してきた彼らのフレッシュな記憶を「パルス討論」で掘り起こし、得られたラベルを元に個々人でのKJ法図解作成を目指します。
 難関はなんといっても(狭義のKJ法における)「グループ編成」時の〈表札づくり〉です。
 個人作業に移る前に、「パルス討論」時の各グループで相談しながら、練習問題に挑戦してもらいました。

 A「かくれんぼをしたら楽しそうな集落。」
 B「家と家の間にできたすき間からのぞく景色が気になって仕方なかった。」

 仰木地区は、「棚田」の美しく広がる里山風景で有名ですが、田地を確保するために、家々は傾斜の激しい場所に密集しています。複雑な集落の風景から得た印象を記した、一昨年の学生のラベルが二枚、仮に「ラベル集め」でセットになったものとして、これらにつける「表札」を、各グループで検討の上、板書してもらいました。

 1.好奇心をそそる様な集落の風景。
 2.昔からある地形にそった風景が人を動かす。
 3.集落のもつ地形やすき間からのぞく景色が探究心を刺激してくる。

 三つの解答が得られたわけですが、結果からいえば、「表札」としては2が最も適切です。
 要するにA、Bのラベルが訴えかけてくる、仰木の集落ならではの質感を統合して表現すればよいのですが、1では「好奇心」、3では「探究心」への刺激としてまとめたところにバランスの悪さが見られます。Aのラベルの「かくれんぼをしたら楽しそう」という表現のもつニュアンスが乏しく、Bの「気になる」気持ちに偏ってしまっています。また1、3とも、風景・景色についてのイメージの統合が乏しいか、「足し算」になってしまっているところが物足りない表札です。
 というわけで、2の表札では、「昔からある地形」がどんな地形なのか、までは表現されていませんが、フィールドワークした当事者として、二枚のラベルをひとつのイメージとして把握する作業はクリアされており、その風景がダイナミックに人の心にはたらきかけてくるのだという質感が、端的にまとめられています。
 かくれんぼへの郷愁あるいは幼児的なときめきの感触と、家々のすき間をどきどきしながらのぞかずにはいられない刺激的な風景との関わり。いずれにせよ、客体視して鑑賞しているだけではすまされない、ダイナミックな風景の起爆力を、シンプルに表現したいところです。

 単なるKJ法の演習ではなく、自らの造形表現へのこだわりをも抱えながら体感する、三日間のフィールドワークという〈現場〉を通過していればこそ、それぞれのラベルの訴えかけをイメージとして的確に把握できるのであり、そこからのイメージの「融合」も適切にすすめられるのだということを、あらためて感じることができました。
 
 余談ですが、「結果からいって2のチームが一番・・・」と告げるやいなや、男子学生4人で解答したこのチームから勝利の「雄叫び」が、他チームからは無念をかみしめるうなり声が湧き起こり、教室がどよめきました。
 たった一問とはいえ、〈表札づくり〉における統合の苦しさと楽しさとをチームで乗り越えた「男組」の表情が印象的でした。

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