闇の「ほぐれ」

  • 2020.02.29 Saturday
  • 17:56

 

 春立つやあかつきの闇ほぐれつゝ  久保田万太郎

 

 あかつき、と言えば、まだ夜が明ける前のほの暗い時間帯のこと。

 冬のあかつきの闇の深さ、きん、と世界が凍てついたような孤独で厳しい風景というものが、立春とともにほぐれてゆく。そういう季節感を切り取った句ですけれども、人それぞれのくぐり抜けてきた闇と、その融解、光の兆しの感触を想起させる句でもあります。

 暦の上だけでも春が立つ、そこに、闇がほぐれてゆく気配を感じ取るように、私たちもしばしば、まだものごとがけっして順調に進んでいるとはいえない、好転の兆しが見えない、混沌の中にいる、そんな状況においても、かすかなかすかな気配としての「ほぐれ」を感じ取ることがあります。しかも、凍てついたあかつきの闇が暗ければ暗いほど、混迷が深ければ深いほど、かえってその「ほぐれ」は鮮明で確かなことすらあります。あくまで気配にすぎないのに、なぜか疑いようがないほどに、確かな手触りを帯びて、その気配は立ち上がってきたりするのです。

 そんな気配を探して、感じ取って、触れて、確かめて、握りしめて、信じて、賭けて、祈って、変わってゆく。

 それは、受け身のように見えて、実はしんしんと深く主体的・能動的な身構えであるとおもわれます。

 

 混迷の季節。

 あかつきの闇の「ほぐれ」を、一人ひとりが丁寧に感受し、真に生命的な季節を迎えたいものです。

 

 

 

 

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