世界の〈貌〉

  • 2016.01.29 Friday
  • 10:26
 
 このブログは野鳥ブログではないのですけれども、カメラを持って霧芯館近隣を歩いておりますと風景・野鳥・野生の鹿などに自然と目が向いてしまいます。

 新年も、気持ちがあたたかくなる一枚が撮影できました。


 
 霧芯館のある京都・松ヶ崎から、北の岩倉地域へと抜ける狐坂のふもとで、なにやらリズミカルに地面を飛び跳ねている鳥の気配。
 ムクドリにしてはふっくらしているし、スズメにしては大きすぎるし、お初にお目にかかる写真の姿と野鳥の図鑑を見比べているうちに、これはまぎれもなくツグミだと判明いたしました。
 インターネット上のツグミの写真もいろいろ見てみましたが、これはなかなか稀なるふっくら具合。おなかのまるみがほとんど球体で、濃い斑点の野性味と背中のぬくもりのある色彩とのコントラストも目に楽しく、こちらのからだがほかほかしてくるような愛らしさです。
 しかもくるりと見返ったつぶらな瞳はやや遠くを見つめ、ロマンチックな風情にはケレンミも感じられて、笑いを誘います。
 
 ああ、世界は私にこんな〈貌〉を見せてくれる。
 たかが一羽の野鳥と出会っただけのことですが、それを撮影した写真をつくづく眺めると、私が世界にどのような〈貌〉をしていて欲しいのか、否むしろ、世界が私にどのような〈貌〉を見せたがっているのか、その表情がツグミを通して露呈しているように感じられてなりません。その〈貌〉を、私の自我意志の延長としてではなく、他者の〈貌〉として、私は新鮮に感受して驚嘆いたします。
 私が望んだからツグミがポーズをとってくれたわけでもなく、ツグミのさまざまな表情の内の一瞬を私が狙って撮影したわけでもありません。狙ってこんな写真が撮れるものではありません。でも、たまたまかと言えば、たまたまにしては私の撮る野鳥たちはどれもなにやら“お笑い”が入っている(以前ここに掲載したキジにしてもメジロやモズにしても・・・)。
 これは、世界が私に野鳥を通して、その在り様の本質をシンボリックに見せているのだと感じられるのです。世界は美しくて、たくましくて、ちょっとアホ可愛くて、あたたかいよ、と。
 このような出会い方は、なにも野鳥との間に限ったことではなく、自然の風景とも、人や街や建物や機械との間においてさえ、日々生じていることであり、私たちはそれとことさらに意識せずとも、一瞬一瞬、世界と不断にやりとりをして生きています。他者や風景が私たちに見せる〈貌〉を、どのように感受して関係性を構築してゆくのか、日々、一見ささやかな、しかし重大な判断を繰り出しています。そのことでほんの少し、時には劇的に更新される世界風景によって、奥ゆきを増す〈信〉に支えられて実は生きています。少しでもよりあたたかな世界の〈貌〉に触れたくて生きています。
 その〈信〉とは、「あの人には嫌なところもあるけれど、いいところもあるのだから、いいところだけを見るようにしよう」といった、小ざかしい理知や処世によって対象の表情を己れに都合よく切り取る術のことではなく、あくまで存在全体の核心としての〈貌〉とより良く出会う叡智のようなものだとおもうのです。
“渾沌”をして語らしめてその核心をシンボリックに呼び活けるKJ法という方法論の本質も同様です。矮小な“我”や“はからい”を超えることで、空疎な観念性を排し、身の内とコスミックな世界との、地に足のついたふくよかな往還において生きる力が目覚めるように、私たちの身体の深奥に語りかけてくる方法はKJ法だけなのだと、澄んだ気持ちで言い切ることができます。
 私たちが誠実に、より良き世界の〈貌〉と出会おうとする時、饐えた〈不信〉や酷薄な〈不条理感〉に気萎えさせられる時もあれば、一見悪気のない観念的な〈信〉によってうつろな誤謬へといざなわれてしまう時もあり、生活者として良き物語を紡ぐのは生易しいことではありません。
 繊細だが酷薄な不毛と、タフだが鈍感な欺瞞とのあわいで、一瞬一瞬漕ぎ出したい方向性を“脱・観念的に”見定める営為のことを、ほんとうは〈生活〉と呼ぶのだとおもわれます。それは、安易な道ではありませんが、細い細い丸木橋から転げ落ちないようにと神経症的なまなざしを研ぎ澄ますことではなく、繊細であることが大胆であるような、晴れ晴れとした歩みへの希求であるはずです。
 KJ法が体現する世界観の本質は、そういう意味で真の〈生活者〉のためのものであり、「ボトムアップ」という言葉も、この本質が実現されるときに空疎な観念性を脱することができるのだと考えます。
 
 2016年、世界が私たちにどのような〈貌〉を見せようとするのか。
 真の〈生活〉の質を高める一人ひとりの営為の内に、巨大な変容はいつかその全貌を顕すだろうとおもわれます。




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