2017年を振り返って

  • 2017.12.28 Thursday
  • 18:26

 

 今年も霧芯館にたくさんの方々をお迎えし、KJ法とその世界観に、じっくり触れていただきました。

 受講された方々を対象に開催しております夏・冬のワークショップでは、「〈違い〉がわかる瞬間」というテーマでグループKJ法に取り組んでいただき、〈現在〉の抱えている課題を浮上させてまいりました。

 その中で、今年もさまざまな領域の方々と触れ合い、さまざまな現場の匂いを臨場感をもって味わう体験をさせていただくことができました。

 

 いずこの現場でも、「今の学生は」とか「今の新人は」といった嘆息が、人を育てる側から聞かれます。その嘆息の内訳のとんでもなさは目を白黒させるくらいで、こういう学生が現場に出たらどうなるんだろう、と、特に医療現場に出てゆく看護師育成の現場のお話には不安をおぼえたりします。そこには、昨今話題の「毒親」の影がつきまとっていたりもするようで、一朝一夕で若者を一人前には出来ない、根深い病理に誰もが疲弊しているのを感じます。

 それでも、育てる側の方々の、困惑しながらもしびれを切らすのではなく、学生の強みをどうすれば現場で生かせるのかと、アプローチの仕方を模索し、日々奮闘しておられる様子には頭が下がります。

 若手にKJ法でグループ作業をさせてみたところ、思いがけない集中力と粘りを発揮し、深い手応えを得られた、といったご報告を、しみじみ嬉しく感じたこともあります。

 あきらめない方々が、困惑と嘆息を乗り越えて、若者の内に秘められていたものに触れておられる気配を、間接的ですが私も深く吸い込ませていただきました。

 

 KJ法の修行の機会を、と毎年ワークショップを開催しておりますが、この修行にハマってくださる方も年々増えて、今年も夏・冬ともに盛況でした。KJ法の修行は厳しいけれども楽しいものだということに気づいていただくのが、主催者としての最大の狙いです。

 KJ法に出会う前と後では、世界風景が違ってみえる。

 そう思っていただける人を、今年もじわっと増やせたのなら、私にとって良き一年であったと振り返ることができます。

 

 日々、KJ法で風景を更新し続けておられる方々も、今年初めてKJ法で風景が変わった方々も、どうぞ良いお年をお迎えください。

 


 

 

 

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霧芯館KJ法ワークショップ 2017 其ノ二〜参加者のみ閲覧可〜

  • 2017.12.19 Tuesday
  • 21:51

霧芯館KJ法ワークショップ2017 其ノ二

  • 2017.12.19 Tuesday
  • 18:41

 さる12月16日、「霧芯館KJ法ワークショップ2017 其ノ二」を開催いたしました(於:京都テルサ)。

 

 8月に行われた夏のワークショップにおいて、今年は「〈違い〉がわかる瞬間」というテーマで参加者によるディスカッションがあり、数百枚のラベルが提示されていたわけですが、冬の参加者には、そこから私がピックアップしておいた70枚を事前によく味わってきていただき、「其ノ二」当日はチーム毎に20枚のラベルを精選し、「狭義のKJ法」で構造化していただきました。

 

 今回のテーマにおける〈違い〉は、本物であるかどうか、自分が求めていたものであるかどうか、質か良いかどうか、といった意味に限定したのですが、そのことで、〈価値〉をめぐる私たちの判断の質をあぶり出したいというのがねらいでした。

 このテーマでKJ法にまっとうに取り組みますと、それぞれの〈価値観〉をぶつけ合うことにもなります。日頃、互いの価値観には触れないでおこう、相手を尊重しよう、自分と違う価値観にはそっと目をつぶろう、といった柔和で微温的な距離感で生きていたとしても、この日ばかりはそうも言っていられない、といった状況になりかねないことを少しばかりどきどきしながら期待していたのですが、この「そうも言っていられない」は素敵な形で実現致しました。

 時間内に図解を完成させるべく、各チームでメンバーが一丸となる必要に迫られたとき、異質極まりないラベル達が、メンバー全員の合意のもとに統合され、構造化され、本質を浮上させるプロセスにおいて参加者の発していた熱気は、半端なものではありませんでした。

 穏やかで口下手な人だけど大丈夫だろうか、自己主張の強い参加者に牛耳られてしまわないだろうか、世代や背景が違い過ぎてすり合わせられないのではないだろうか。そういう不安は吹き飛んでしまいました。

 誰一人無口な人はおらず、初対面同士をも含むメンバーで、おそらくは同じ職場や生活圏内での関係においては突っ込んだこともないような実存的な問いや本質的な課題をラベル群の奥に感じ取って、まっすぐやりとりしている風景というのは、一種異様な「ハレ」の空気感、お祭りのような非日常性が躍動していました。

 

 本物探しは実は自分探しの旅なのだという把握、本物を追求する・しないの〈揺らぎ〉からスタートして本物へと成長するドラマ、本物と偽物が共存する世界で揺さぶられる私たちの振れ幅の大きさ、リアルにもファンタジックにも人を変える力をもつ泰然とした本物、持続性と独創性を秘めてこその本物、カオスから本物を浮上させるドラマ、といった、異質な構造化が出そろったのですが、いずれの図解にも、〈本物〉が課してくる厳しさへの憧憬とかすかな不安が滲んでいたようにおもいます。

 

 私が事前に作成してきた、70枚全てを使った図解も披露いたしましたが、図解タイトルは「厳しさが優しさであるように」というものでした。

 存在として〈本物〉であろうとすることも、〈本物〉を見きわめることも、実に厳しい試練にさらされますし、他者にわかってもらえない孤独な追求です。本物にこだわらなくてもいいじゃないか、という気持ちに安らぎたい自分もいます。その両者は相反するように見えますが、一度〈本物〉に出会ってしまうと、世界風景は一変するのであり、〈厳しさ〉は〈優しさ〉でもあるといった境地に突き抜けてしまうようです。恋に落ちて世界風景が一変するように、厳しいのか優しいのか、そんな区別すらどうでもよくなってしまう。後戻りのきかない風景の激変を、〈本物〉は誘います。

 

 各チームの図解にも、そういう風景激変の瞬間が必ず封じ込められていて、誰もがこの日の作業を通して、その本質にしっかり触れておられたのを感じることができました。

〈本物〉のKJ法の作業は、ことのほか人をそういう境地に追い込むものです。

 妥協の無いラベルの統合をしたくて悶々としながら、その厳しい時間をこの上なく楽しんでいる自分がいる。KJ法的至福の時間に全身浴しているみなさんの顔を見ながら、私も幸せな時間を過ごすことができました。

 

 

 

 

 

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